運命の第二試合、試合はいきなり動いた。開始わずか1分、相模原が攻め、右からのクロスを中央にいた森谷があっさりと決めて1-0。次に7分、またも森谷が決めて2-0。その後もペースは相変わらず相模原。ちょうど、「キャプテン翼」の修哲小の「とりかご作戦」のように相模原が最終ラインでボールを回し、山口の選手がそれを追うもボールは取れず……という状態。山口サポから「ちゃんとやれよ!」という声が飛ぶが無抵抗状態。前半終了したとき、正直に言えば「寒いんでもう帰ってもいいですか?」とツイートする寸前だった。
しかし後半、ハーフタイムにねじを巻き直されたかのように、山口の選手がだんだんボールを追えるようになってきた。あるいは相模原の選手が疲れていたのかもしれないが。68分、山口にこの日最初の決定機が訪れた。右からのクロスに柏原がヘッドで合わせて1点を返す。続く78分にはゴール前の混戦で相模原の選手がクリアしたボールが山口の田村の元へ飛んでいき、田村がこれをヘッドで叩いて2-2の同点とする。
観客席は、前半のまったりムードとは異なり、今やもうどよめきや怒号や悲鳴が交錯する場所になった。必死に応援する相模原サポ、ここぞとばかりに応援をたたみかける山口&Y.S.C.C.連合。スタンド中央で座っていた普段はおとなしそうな観客も大声援を送る。
そしてサッカーの神様がほほえんだのが、山口だった。
87分、左からのクロスをまたしても柏原がヘッドで押し込み、ゴールネットが揺れた。2-3! 前半の様子からは誰がこんなスコアを予想したであろうか?
一方他会場はどうだったか。Bグループでは盛岡が札大GP相手に2-0としあと1点取れば1位で突破するというところまで来ている。このまま行けばBグループは2位が勝ち点5。Cグループでは、twitter実況によると「ボールをコーナーフラッグ付近でこねるだけの簡単なお仕事」で残り時間を使おうとする讃岐、長野の両チーム。このまま行けば2位の勝ち点は「6」になり、相模原を上回る。
相模原は必死に戦った。コーナーキック時に、相模原のGK佐藤がベンチを見る。おそらく他会場の経過が知らされているであろうベンチからは「上がれ」のサイン。そして佐藤は勇敢にもゴールを空にしてセットプレーに参加していく。しかし攻撃は立ちはだかる山口の厚い壁を崩せない。
そして……審判の長い笛が鳴った。山口サポの歓声、相模原サポの悲鳴、結果的に1位が決まって喜ぶY.S.C.C.サポの歓声……。
そんな中、相模原サポのコールリーダーが言った。
「俺は今シーズン本当によくやったと思ってるよ! だから今から選手コールするよ! 俺一人でもするよ!」
そして、背番号順に選手のコールを始めた。途中、待ちきれなかった山口サポからのエール交換もはさみ(まったく察してやれ! あのタイミングでやるとかほんとに失礼な話だ)、全選手のコールが終わった。
そして、彼は言った。
「来年さ、全社で勝ってまたここに来ようよ!」
そうだ。勝っても負けても、クラブが存在する限り、フットボールは続いていくんだ。
相模原は、少し痛い経験をした。でも、来年も再来年もそのまた先も、若いクラブは経験をいっぱい重ねながら進み、いつの日かJFLやJで戦うことになるだろう。それはそう遠くない日になりそうだ。
「長文注意: 「ひたちなかの悲劇もしくは奇跡」(その5/終)」への2件の返信
レポートありがとうございます。
あの日を思いだしてまた涙が出てきてしまいました。
私も選手達はあのチーム状況の中よく戦ったと思っています。
そしてこの経験により選手達はより強くなったはずと思います。
望月代表の標榜する元サッカー選手達で作る本当の意味での地域に密着した100年続くプロフェッショナルクラブ作りはまだたった3年目です。
これからもずっと熱く応援し続けていきます。
コメントありがとうございます。
100年計画、徐々に実現していますね。これからも頑張ってください!